落とし物です、山本様

 

晴れた日は、近所の畑に猫が落ちています。

そんな環境だから、私は夜になったら、時々木天蓼をもって出かけます。

エサは他の人からもらっているようだから心配いりません。

エサが出てこないとわかっているのに姿を見せてくれる、優しい猫たちに感謝です。

エサが出てこないからって、後追いしない、優しくて賢い猫たちに感謝です。

私はコンクリートに座って、壁にもたれて、夜の匂いを体いっぱいに吸い込みます。

それから猫を見たり、星を見たりしています。

天頂付近にカシオペアシリウス、すばる、東の空には大きく横たわったオリオンが見えます。

月の満ち欠けを見ていると、時間の速さに飲み込まれそうで、ぞくぞくします。

 

観察していると、猫ってほんとに賢い。

一匹は私のそばから離れません。

私に身体をすりよせながら、ぐるぐるぐるぐる歩きまわって、

なでてアピールがすごい。(ワタシ、ウレシイ!)

そして、もう一匹は、離れたところに、でも、よく見えるところにちょこんと座って、

さらに離れたところに、でも、よく見えるところにも、もう一匹。

と言った具合です。

一番近くの猫が、私から少し離れて毛づくろいを始めると、

腰を低くして他の一匹が近づいてきます。

そして、私が緩く投げ出した足の下に入り込む。(ワタシ、ウレシイ!でも、触ろうとすると逃げちゃうから、息をひそめてじっと我慢。)

それに気づいた、毛づくろい中の猫が、にゃあと言ったら逃げちゃって、

時々は猫パンチが繰り広げられて、

完全な猫縦社会。

そんな、ちょっとした小競り合いのすえ、

それぞれの距離で、寝っ転がったり、毛づくろいしたりして、

落ち着きを取り戻すのです。

だから、猫たちを見ていると、

こちらも穏やかな気持ちになります。

 

ある日、気づくと遠くの方に見かけない猫一匹、

門の隙間からじっとこっちを見てる。(イツカライタンダロウ?)

しばらくしたら、門の手前に出てきてた。

まるで「だるまさんが転んだ」でもしているかのよう。

私も、なじみの猫も、しばらく様子を見てるけど、動く気配は全くなし。

安全で穏やかな時間が続きます。

またしばらくして見てみたら、さらに出てきて姿全体を見せてくれた。

見たところ、まだ小さくて若い猫。

じっとこちらを見てるけど、

でも、これ以上は近づかないみたい。

ごめんね、エサは持ってないんだよ。

でも、もしよかったら、仲良くしてね。

 

neco猫婆_bbより